自律型人材の育成に失敗しない6つのポイント
「うちは自律型人材の集団にしたいんだ。」
「受動型人材は、自律型に成長してもらわないと。」
「うちのような小さい会社に受動型の人材はいらない。」
よく経営者の方々からお聞きする言葉です。
他にも「指示待ち人間はいらない!自ら考えて行動しろ。」とか「問題を解決するために、もっと頭を使え。」などという言葉も聞こえてきます。
そういう思いはあるものの、なかなか思うような自律型人材は少なく、育成も難しい、そんな風に感じてらっしゃる方もいるのではないでしょうか?
そんな方々のために、この記事では『自律型人材とはどういうものなのか?』『自律型人材に育成するにはどうしたらいいのか?』をお伝えします。
記事の中盤では、自律型を言えば言うほど、受動型になっていくカラクリも書いています。
自律型人材とは?
組織においての『自律型人材』とは、経営者の意図する方向性の中で、期待された成果を出す人材を指します。
それは、期待された成果を出す過程で起こる、大小さまざまな問題に対して、自らの判断で臨機応変に対応できるということです。
その判断軸は、組織全体の利益(数字だけではなく、経営者の意図・チームの士気、会社イメージ向上なども含めて)を最大化することです。その判断軸から判断実行し、成果を出す人材です。
自律型人材に必要な素質
自律型人材にも、さまざまな性格・タイプがありますが、共通する素質として以下の点が挙げられます。
- 会社の方針や経営者の意図を理解し判断軸に出来る。
- 求められる成果を出すことを自分に対してコミットしている。
- 周囲を巻き込んで物事を進めることができる。
- 目標や課題に対して、解決策を見つけ実行できる。
- 現状、不足していることに対して創意工夫ができる。
そして、自立型の反対は受動型です。
受動型とは、受け身の姿勢で仕事をする人です。指示待ち人間などと言われています。
自ら考えることをせず『言われたことだけをやる』『やるべき必要最低限のことだけをやる』という人材です。
ルーティンだけをこなして欲しいという部署には必要なタイプ人材です。ですから適材適所なのですが。
この後、実は自立型タイプの仕事ができる人材なのにも関わらず、受動型にならざるをえないパターンをご紹介します。
自律型にしようとするほど受動的になる3つのパターン
①インプットがないのに自律型を強要される場合。
あまりにインプット(必要な情報を得たり、経験したりすること)がない人材(新人だったり、全くの他業種からの移動など)に対して、自律型を強要すると、インプットがないため、判断軸がわからずに思考停止に陥ります。
最初から自律型の人材はいますが、そういうレアな人材以外は、まず最初はしっかりと基本を伝えたり、経験を積ませるというプロセスは必須です。
こうして書くと「当たり前」と思いますが、実は多いパターンです。
創業者であれば、最初から自分の思い描く道を創造できますが、組織にいる人間は、その組織の中での自律型を求められるのです。
ですから、その企業の方向性や経営者の意図を理解することも必要です。そして、業界や企業での常識や風土、知識や経験が必要不可欠なのです。
それらを積み重ねての『自律型人材』です。その土台なしに自律型を強要すると「わからない」「教えて欲しい」と受動型になるのは仕方がないことです。
この段階で「教えてください」というのは自律型になるために必要なプロセスなのに「自分で考えろ!」「自律型になれ!」などと強要すればするほど、混乱したり自信をなくしたりして受動型になります。
②権限が明確ではない場合
「まずアイデアを出して欲しい。予算がつけれらるかはその後判断する。」「このチームで◯◯を達成して欲しい。チームマネジメントは任せた。」など自分の範囲が明確なら、人はその範囲の中で安心して自由に発想し行動が取れます。
しかし、予算や組織・人を動かすなどの権限が明確ではない時、せっかく持っている自律型の能力は発揮できません。
明確ではないから質問して「それは全部任せた」「自由にやればいい」「尻拭いは私(経営者)がするから、まずはやってごらん」などと言われるとします。
言葉通りに、全部任せてもらえたんだと理解して、予算づけもチームの運営も意欲的に取り組んだのにも関わらず「予算がかかりすぎだ。コスト感覚を身につけろ!」「そんな人の使い方はダメだ!」などのダメだしが多いと、どこまでやっていいのか分からなくて能力が発揮できません。
もちろん、まずやらせてみて経験を積み育てるということは非常に大切です。
しかし、その場合はダメだしだけではなく「どうしてそう考えたのか」「どうしてそうしたのか」をしっかりと聞き、よりよくするアイデアや方法はないか、ともに考えて視野を広げたり経験を積ませることが必要です。
そして、本当に任せた部分に対して、よほどのことがない限りは、部下のやり方でやらせてみるというのも必要です。
やらせてみて、ただダメだしばかりでは能力を発揮できないばかりか、本人としても、指示待ち人材になるしかなくなってしまうのです。
③経営者の中に答えがある場合
権限が明確ではないということに近いのですが、こんな実例もあります。
その会社の経営者は「うちには自律型人材しかいらない!」と言って、四六時中「自ら考えろ!」「提案しろ!」「これは任せたから自由にやって結果を出せ!」などなど、社員を鼓舞していました。
そして、仕事もできる有望な自律人材が、自ら考えたアイデアを経営者に提案するのですが。
「自由にやれ!」と言いつつ、経営者の中では、実はすでに答えやイメージが決まっているので、自分の思い通りの提案ではないと却下するのです。
頭の中は千差万別ですから、経営者の持っている答えそのものを出せる人は超能力者でない限りいません。
結局は、実践したいアイデアは経営者の中にあり、他のアイデアは受け入れられないのですが「うちは自律型人材しか入らない!アイデアを出せ!」と出させるのです。
しかし、秀逸なアイデアを出しても採用されないので、次第に誰も出さなくなります。
そして、有能ゆえにプライドが傷つき「どうせやっても無駄」と、どんどん受動型になっていきます。その受動型な態度に、TOPが「もっと自発的にやれ!」と鼓舞するのですから悪循環です。
このパターンに陥っている会社を数社関わりましたが、経営者の中にある「経営の理想」と「自身の器」のギャップがあるときに、このパターンに陥るのだと思います。
理想があるのは素晴らしいことですので、その理想に近づくために、経営者自身が自分を改革していくことが必要です。
自律型人材の育成方法
業務内での育成
①まず経験を積む
一通りの仕事をこなせるようになるまで経験を積む。
②指示ではなく考えさせる
ある程度、仕事の内容ややるべきことがわかってきたら、仕事の指示をするだけではなく。
「この場合は、どうする?」「どうしたらより良くなる?」「相手から見たらどう見える?」などの問いかけで、自ら考えさせる。
考えさせることで「なぜ、これをする必要があるのか?」「この仕事は、この先どんな流れになっていくのか?」「お客さんだけではなく、この仕事に関わる人により喜ばれるのはどんなことか?」など、先を考えたり全体を見る習慣が育つ。
この習慣が自律型人材に育てるための礎となる。
③責任のある仕事を任せる
1人で仕事ができるようになり、仕事の流れや全体を見る習慣がついた頃に、少しづつ責任のある仕事を任せる。
この時に小さな失敗や挫折も必要です。
なぜなら、失敗や挫折からの学びこそが大切だからです。そして、失敗や挫折を経験しての成功は喜びも大きく、自信にもなるものだからです。
ですから、少しづつ責任のある仕事を任せていって、本人の実力より少し高い仕事をさせていきます。そこで自ら試行錯誤し、失敗や成功を繰り返し、体験の積み重ねで自律型人材に育っていきます。
研修での育成
自律型人材研修は、各企業によって具体的なプログラムやスケジュールが異なります。会社の規模や業種、社員の資質や状況によってカスタマイズするのがいいでしょう。
また、自律型人材研修は『リーダー研修』の一環として行います。研修の種類は主に3種類あります。
①外部の講師による講義
自律型人材に必要な基礎知識(目標設定力・人を動かすコミュニケーション力・課題発見力・課題解決力・自己管理能力)を講義やワークを中心に学ぶ。
②内外部のファシリテーターによるディスカッション
リーダーが数名で『実際に現場で起こっている課題解決のための提案』や『成功・失敗した実例』などを発表し、解決策をブラッシュアップします。
具体的なケーススタディを扱い、様々な意見を聞くことで、具体的な発想力が養われたり、コミュニケーション力が身につきます。
③面談
人材育成コンサルタントとの1対1の面談を定期的に行う。社内では誰にも言えないケースや悩みを整理できたり、個人的スケールのPDCAサイクルを回すことで、リーダーとして成長が加速する。
まとめ
「自律型人材を求めている!」と言いながら『自律型人材とは、どういうものか?』が実はあやふやな場合。または、せっかくの自律型の素質を気づかずに潰していたりする場合も多いのです。
自社にとって必要な人材像を明確にし、その人材に育てるには、何が必要なのかを明確にし、実践するということが大切です。今回の記事が少しでもヒントになれば幸いです。
さて、社内では業務に忙殺されたり、関係性が近すぎたりなどの理由で、なかなか『自律型人材の育成』は難しいものです。
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